うま藻 × プロフェッショナル
美味しさを繋ぐ現場へ

私たちは日々、うま藻を通じてプロフェッショナルの皆様と出会います。
業態は違えど「美味しい」が続いていく未来を目指していることには変わりません。
そんな彼 / 彼女らが見ている世界を対談形式でご紹介します。

美味しさを繋ぐ現場へ 第一回対談
てのしま オーナーシェフ 林 亮平 氏

うま藻ジャーナル、第一回は和食「てのしま」の林シェフ。
うま藻の隠れアンバサダーであり、美味しさを未来へ繋ぐ心強い同志として、記念すべき第一回目の対談をお受け頂きました。インタビュアーは代表の高田が務めます。

プロフィール
てのしま / 林 亮平 オーナーシェフ
1976年、香川県丸亀市生まれ、岡山県玉野市育ち。大学卒業後に京都の料亭「菊乃井」に入り村田吉弘氏に師事し、17年間務め上げる。2011年、上海万博の日本産業館内料亭「紫」料理長を務め、同年菊乃井本店副料理長に就任。2015年、菊乃井赤坂店渉外料理長となる。シンガポールエアラインの機内食開発やJR西日本「瑞風」のメニュー開発、国際会議や首相官邸での晩餐会の料理を担当。20カ国以上で和食普及のためのイベントに携わり2018年3月、東京・青山に「てのしま」を開店し独立。2019年より、4年連続でミシュラン一つ星を獲得。

— どのような選択を重ねて料理人・林亮平がありますか?

林 亮平(以下 林):大学卒業を見据え普通に就職活動をしている折、「やはり好きなことをして生きていく」と決心したことが料理人としてのスタートです。それから、和食の最高峰である京都にある料亭「菊乃井」に採用して頂き、本店の副料理長まで務めました。

その間、20以上の国や地域で和食を伝えるという機会の他、パリの最高級ホテルプラザ・アテネの「Alain Ducasse(アラン・デュカス)」で日本料理を出したこともあります。面白いことに、各地で出会う料理人は、必ずと言っていいほど数々の“問”をぶつけてきます。なぜ料理をやっているのか、なぜその料理なのか、出身はどこか、なぜ今ここにいるのか。その問いに対して、はっきりした答えがあるからこそ、料理にもそれが現れてきます。いいかえれば、世界で戦うということは、己の本質を表現していくことだと学びました。

和食という料理を通じて、今でも毎日、己の本質を表現していくある意味肉弾戦が続いています。笑

— 20年以上料理の世界に携わり、海の資源の持続性可能性について活動しているシェフの集まり “Chefs for the Blue” でも精力的に取り組まれています。
林さんから見た今の食の現状を教えて下さい。

林 : 和食に欠かせない昆布や海苔、魚などの海産資源が近年劇的に減少しています。
生産者さんのお話を聞いたり、日々食材に向き合う中で、その現実を目の当たりにすることが多く、このままでは和食自体が成立しなくなってしまうのではないか?という危機感を募らせています。

だからこそ、自分たちの目で食の現状を見て、それを発信していくことが必要だと思っています。目の前にいるお客さんには、美味しさはもちろんですが、自分が見てきた食の背景を伝えていければと思っています。

※ 海の資源を守っていくことを理念に活動するシェフコミュニティ(https://chefsfortheblue.jp

— 食を未来に繋げるには、今何が出来ると思いますか?

林 : 色々ありすぎます。ですがまずは、食を知ること、これが重要なことだと思っています。

メディアからの食に関する発信は、かなり偏りがあると思っています。サンマが食べられないことは報道されますが、その背景を伝えることはほとんどありません。美味しい店の情報は発信されても、その美味しさを支える食の作り手に関する情報は無いに等しいです。

また、減りゆく食材を未来に繋いでいく取組みも、同じように知られていないですがたくさんあります。うま藻ももちろんそう。最近で感動したのは、北海道の襟裳岬です。半世紀も前に、襟裳岬では海の豊かさを守るために人知れず植林活動が行われました。減りゆく北海道の資源を見て、先人たちが未来に賭けて植林を行った。その結果、海へ流れる栄養素が保たれ、海の豊かさを守ることにつながりました。知られていないだけで、熱い志を持って未来に食をつなげていく事例は、日本にたくさんあるんです。

そして原点回帰ではないですが、シェフとして食を未来に繋ぐためには「美味しいご飯を食べることができて幸せ」と皆様に思ってもらうことが重要だと考えています。やはり、食が脈々と語り継がれるのは「美味しい」からだと思っています。家族に食べさせたい、両親に食べさせたい、子供に食べさせたい、その思いが脈々と受け継がれて、今の日本の食文化を形成したと思っています。美味しさを通じて「食を守りたい」と皆様が思ってくれれば、日本の美味しさを未来に繋ぐことが出きるのではないかと思っています。

— 熱い志がある林さんに、いつもほてらされる気がします。
これから、何を仕掛けていくか教えて下さい。

林 : 瀬戸内海にある「手島(てしま)」という島があります。人口わずか20人、このままだと誰も住まない無人島へとまっしぐらです。多くの人から無謀な取組だと言われてきましたが、残りの人生でこの島を“人が生活できる”持続可能な島にしていきたい。なぜなら、私のルーツはこの島にあり、途絶えかけている島の暮らしを次の世代へと繋いでいくことは、料理を通して公の利益に尽くすという信念に沿う生き方だと思うからです。

人がそこで生きていくためには、島の魅力を伝えるだけではダメで、経済を回す仕組みが必ず必要です。それは言い換えれば、その土地の魅力を生かして自給自足できるだけの循環を生み出す仕組みだと言えます。私に出来ることは、手島に「食を中心に人が集まる場」を作ること。それを起点にして、漁業、農業、林業を復活させ、自分たちがいなくなっても循環できる仕組みを作っていきたいと思っています。

今ここ「てのしま」でやっていること、その全てがこの目標に繋がっていると思っています。目標は壮大だからこそ、一足飛びで進めるとは思っていません。毎日の地道な肉弾戦を通じて、目標に向けて一歩ずつ進んでいきたいと思っています。

— うま藻も、その旅路のお供になれれば嬉しい限りです。
最後に、今回の「未来の精進料理」に託した思いをよろしくお願い致します。

林 : まずは、うま藻と巡り合う機会を頂いた外村さんに感謝したいと思います。うま藻を一口食べた時、味のレイヤーの深さには衝撃を受けました。植物性でここまで強い旨味がある食材は珍しい。

この旨味と植物性という特徴から「精進料理」がいいのではないかと考えました。仏教に基づく殺生や煩悩への刺激を避けることを目的にした精進料理は、動物性食材を使えません。したがって、旨味が不足してしまい、どうしても満足感を引き出しにくい。だからこそ、うま藻が旨味を引き出せば、満足できる新しい精進料理を作り出せるのではないかと。

当日はうま藻だけではなく、シーベジタブルさんの海藻など持続可能な食材を活用することで、未来へとつながっていく一皿を表現しました。しかし、未来を表現するにあたって食材もさることながら、最も重要なのは「美味しさ」だと思っています。美味しいからこそ、時代を越えていきます。その意味では、お客様から「本能に刺さる美味しさだった」とコメントを頂けた時には、私が考える「未来」を表現出来たのではないかと思います。

今回うま藻を通じて、こちらも勉強させてもらいました。高田さんは、食を未来に繋いでいく同志だと思っています。是非旅路を共にしましょう!

てのしま×うま藻
食を未来へと繋げる「未来の精進料理」

2023年10月6日(金) - 7日(土)

うま藻を使って精進料理をより満足感のあるものへ。美味しさを通じて食の未来を表現する「未来の精進料理」をテーマに、てのしま様とイベントを実施致しました。


お品書き

芋の芋和え うま藻がけ
みりんと蒟蒻と黄にらのぬた うま藻レモン酢味噌
揚げ蕎麦がき 天然茸あん
牡蠣フライ
柿と蕪の胡桃酢なます
ハラミとつくね 朴葉包み焼
うま藻穴子棒寿司と稲荷寿司
うま藻と根菜の粕汁
カカオくず餅と豆乳クリーム